(2019.8撮影)

コラム

坂根康裕(住宅評論家)

■坂根康裕(さかね・やすひろ)プロフィール

1987年リクルート入社。
「都心に住む」「住宅情報スタイル 首都圏版」編集長を経て、2005年独立。
不動産市況・解説サイト「Fact Stock(ファクトストック)」主宰、
All About「高級マンション」ガイドも務める。日本不動産ジャーナリスト会議会員。

「広尾」の地に相応しい邸宅マンション

都心の住宅街では<住みたい/憧れ>の象徴的な立地として【3A(スリーエー)】が知られている。麻布・青山・赤坂の頭文字をとったものだ。しかしながら、利便性だけでなく「落ち着いた良好な環境」も加えた総合的な価値の高さでみると「広尾が稀有な存在」といった見方もある。もちろん、それには確固たる事由が存在する。地形、都市計画(規制)、ロケーション、景観、普通借地権(旧法)の5点から解説しよう。

地名由来は「広い野原」

都心部の地形は、高台地と低地、そしてそれらをつなげる斜面地で構成されている。なかでも、江戸時代から武家屋敷等に利用された高台は、広大な敷地がそのまま引き継がれたケースも多く、今では大型ビルや公的施設、公園、ホテル等となって日本の社会・経済をけん引あるいは憩いの場等として活用されている。

広尾の場合、その最たる特長は30メートル程度の高台地が起伏の少ない状態で連なっている点にある。そして、その希少性を帯びた平坦で閑静な高台地に「良好な住環境を永続させるための規制」がかけられた。用地地域のなかでも最も基準が厳しい「第一種低層住居専用地域」に指定されたのである。

都心の中の希少な「一低」

住居・商業・工業に分類された都市計画の用途のなかでも、最も規制の厳しい地域が「第一種低層住居専用地域」(略して「一低(イッテイ)」)。「建蔽率」、「容積率」、「高さ制限」、「用途の制限」等建築(建物)に関わるすべての基準を厳しく規制。「一低」は都心近郊において城南・城西地区に点在するが、都市中枢機能を担う山手線の内側では希少。広尾はその希少な地域にあたるのだ。

※山手線内側エリアにおいて、千代田区や中央区には第一種低層住居専用地域は無い。港区はごく一部「品川区北品川」に隣接するわずかな地域のみが該当

□都心の主な第一種低層住居専用地域※1

人気スポットに囲まれたロケーション

下の画像は、「アッシュダール広尾」現地を中心に1㎞毎に等距圏を記したもの。1km圏内には、東京メトロ日比谷線「広尾」駅、JR山手線他「恵比寿」駅、東急東横線「代官山」駅が含まれ、2km圏では「表参道」「渋谷」「中目黒」「目黒」「白金台」といった駅が圏内に。個性が異なるこれら人気の街を、生活圏に暮らすことができるということだ。

□広尾生活圏内に点在する人気の街※2

渋谷区の東南端に位置する広尾は、東隣に港区南麻布、北に南青山や西麻布と隣接。低層住居地域の落ち着いた環境を土台に、港区特有の大使館が点在する特色が融合し、結果外国人が求める「面積の大きな邸宅」の普及が促された。下表は広尾の丁目別人口密度。第一種低層住居専用地域で、なおかつ戸当たり面積が大きい住宅が多くを占める2丁目が際立って低い。「邸宅で構成される閑静な街の様子」が伺えるかのようだ。

□丁目別人口密度(1平方キロメートルあたり) ※「渋谷区勢概要2019」より
広尾1丁目 24.097人
広尾2丁目 12.626人
広尾3丁目 19.394人
広尾4丁目 17.219人
広尾5丁目 22.222人

緑が豊富で空が大きく広がる
「都心とは思えない街並み」

建蔽率の低い街はおのずと緑が多くなり、自然豊かな景観を形作る。さらに容積率や建物の高さが抑えられると、緑地は一層目に付きやすく空も大きく視界に映る。青空の下、立派に成長した樹々には鳥が訪れ、その鳴き声をして街の静寂さを思い知るのである。

「アッシュダール広尾」は、リノベーションマンションである。現存するも「カスタマイズが可能」な物件だということだ。平均専有面積180㎡超のゆとりある広さ、大きな間口と多面採光がもたらす一軒家のような独立性、開放的な中庭空間(パティオ)、さらには(更新が可能な普通借地権(旧法)による)手の届きやすい価格設定等、注目点は多い。

住戸の窓を開け放ってみるとよい。長々と「高台の閑静な住宅街」の沿革や「第一種低層住居専用地域」の特徴、そして「専有面積が広い」広尾ならではの背景を述べてきたわけが、ほんの一瞬でそれらの魅力を(頭ではなく)感覚として理解できるはずだ。環境・空間とは、本来そういうものである。

更新が可能※3な「普通借地権(旧法)」

手の届きやすい価格帯に設定されているのは、権利形態が普通借地権(旧法)だから。定期借地権は当初定めた期間を更新することはできない。建物を解体して更地に返すのが原則だ。したがって、厳密に表現すれば「資産価値は日ごと毀損していく」。一方、普通借地権(旧法)は建物があれば更新が可能。「借地人に有利」といわれる所以だ。土地の持分が多くなりがちな、低層で専有面積の大きな区分に対し、敷地の固定資産税や都市計画税がかからないことのメリットは(地代を負担するにせよ)考慮の余地が十分あると思うのだが、いかがだろうか。

※1 図は東京都都市整備局HPで公開されている都市計画情報を元に作成したものです。※2 周辺の立地を概念化しイラスト化したものです。 ※3 借地契約更新可(30年、更新料(借地時価5%))